社会保険労務士・行政書士 岩丸総合法務事務所
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 相続は誰にとってもいつかは必ず自らが当事者として遭遇する問題です。また、家族にとっても初めて直面する大問題であったりもします。

 それは大きな財産をやりとりすることでもあり、余計なトラブルを起こさないように手際よく収めることはなかなか難しいことだと言えます。

 そのような問題を当事務所がお手伝いをし、最善の解決策をご提案致します。
 相続人には相続分の他に寄与分という取り分があります。
 寄与分とは、被相続人の生前、その財産の維持又は増加に特別の貢献をした相続人に与えられるものです。寄与分のある相続人は、遺産分割による相続分の他に寄与分も受け取ることができます。ただ、ここでいう寄与分はあくまでも相続人に与えられるものであり、相続とは関係のない人に与えられることはありません。従って、例えば長男の嫁が家業を手伝って被相続人の財産の増加に貢献した場合であっても寄与分が認められることはありません。ただ、過去の判例には相続人以外の寄与に関して、「寄与分」という形ではなく、「不当利得」として認められたケースがありました。
 それでは、被相続人の妻の場合はどうでしょうか。つまり妻としての努力は寄与分として認められるでしょうか。これについては、民法第752条に「夫婦の同居、努力及び扶助の義務」という定めがありますので、その範囲内の寄与に関しては認められません。ただし、その範囲を超えた特別な寄与があれば認められるようです。
被相続人が死亡すると相続が開始し、遺産分割をすることになるわけですが、このときに遺言書がある場合と遺言書がない場合とではそれぞれ手続きが異なります。
 遺言書がない場合は、まず相続人を確定する必要があります。相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行い、話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成し、法定相続人全員が署名・押印するわけですが、稀にあるケースで後から新たに法定相続人(隠し子など)が出てくることがあります。そうなるとせっかく遺産分割協議書を作成しても無効なものとなりますので、念のために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(全部事項証明書)を取得して確認することをお勧めします。尚、金融機関等では通常この証明書の添付を求められます。また、遺産分割協議書を作成しても、きちんと様式に則って作成しないと、法務局や金融機関で名義変更等を受け付けてもらえないこともありますので注意が必要です。一方話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に調停や審判を求めることになります。
 遺言書がある場合の手続きとしては、まず家庭裁判所に遺言書の検認を請求します(公正証書遺言の場合は検認は不要です)。そして当該遺言書の検認が済んだら、遺言執行者を選任して相続手続を進めていくことになります。尚、遺言書の検認は、当該遺言書の内容や効力について実質的な事柄を審査・判断するものではありませんので、検認が完了した後でもその効力が争われることがあります。
 相続が開始した場合に何も手続きをしなければ、プラスの財産もマイナスの財産も相続(単純承認)することになります。もし、マイナス財産が多いため、あるいは相続トラブルを避けるため相続権を放棄したい、またプラスの財産の限度でしかマイナス財産を相続したくない場合(限定承認)には手続きが必要になります。
 相続放棄をする場合には、自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述をします。この3ヶ月間が過ぎると前述の単純承認をしたことになります。従ってこの3ヶ月の間にプラスの財産やマイナスの財産がどれだけあるのか、また遺言書があるのかないのかなどを調べておく必要があります。ちなみに貸金業者の中にはあえて3ヶ月後に催促に行くといったところもあるようですので、そういった意味でもこの期間内での財産の確定は大変重要なものとなります。
 次に限定承認をする場合ですが、こちらもやはり相続放棄と同様3ヶ月以内に家庭裁判所に申述をすることになります。ただ、相続放棄と違って、この申述は相続人が複数いる場合には全員が共同してしなければなりません。
 まず、相続とはどういうことかを簡単に見ていきたいと思います。
 相続に関する事柄を定めているのは民法第五編です。条文によれば「相続人は、相続開始の時から、被相続人(死亡した人)の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りではない」(民法第896条)と規定しています。
 ここで、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」とありますが、これは一体どういう意味なのでしょうか。「財産」に属した「権利義務」というと何だか難しく感じますが、つまり現金や土地家屋の所有権といったプラスの権利ばかりでなく、借金の返済義務や保証人としての保証債務を負う義務(いわば「マイナスの権利」)なども相続するということを意味しているわけです。従って、被相続人の不動産や預貯金などの財産があってもその反対に借金などがあれば原則としてそれらを全て相続することになります。
 尚、例外として、被相続人の「一身に専属する権利」は相続の対象外だとしています。この一身専属権とは、扶養請求権、年金請求権、年金請求権のように被相続人だけが享有または行使できる権利のことをいいます。ちなみに従来は交通事故で死亡した場合などの慰謝料請求権は「一身専属権であるので相続とは認められない」とされていましたが、近年では、請求の意思を表示した、あるいは表示したとみなされる時から一般の請求権となるから「相続の対象となる」とされるようになりました。
 そもそも相続により、例えば親から子に財産が移るのになぜ国から税金を取られるのでしょうか。これは財産を偶然にもらったことによる不労所得に対する社会への還元だということです。相続税は、被相続人から相続人や受遺者が相続や遺贈によって取得した財産について、次に計算式により計算した「正味の遺産額」が「基礎控除額」を超える場合に、その超える額に対して課税されます。基礎控除額の計算式は以下のとおりです。

 基礎控除額 = 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数

 要するに、以下の正味の遺産額が基礎控除額以内であれば、相続税は課税されません。

 正味の遺産額 = (遺産総額 + 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産) -
          (非課税財産 + 葬式費用 + 債務) + 相続開始前3年以内の贈与財産額


 もし、上記で計算した正味の遺産額が基礎控除額を超えた場合は、その超えた分を法定相続分に従って分けて、それぞれで計算をし、出てきた結果を合算した額が相続税となります。ここで注意が必要なのは、法定相続分に従って遺産分割をしなくても、法定相続どおりに遺産分割をしたものと仮定して計算します。そうしないと遺産分割のやり方次第で相続税の総額が変わってしまうからです。

 税額については以下のとおりです。

 ◎1,000万円以下              10%
 ◎1,000万円超~3,000万円以下  15%(速算控除額50万円)
 ◎3,000万円超~5,000万円以下  20%(速算控除額200万円)
 ◎5,000万円超~1億円以下      30%(速算控除額700万円)
 ◎1億円~3億円以下            40%(速算控除額1,700万円)
 ◎3億円超                   50%(速算控除額4,700万円)
 日本では法律婚主義を採用しており、民法の定める「婚姻する意思」と「婚姻届の受理」という2つの要件を満たしていないと法律上の夫婦とは認められません。これが大原則です。しかし、最近では、社会的には夫婦としての実態を備え、夫婦共同生活を送っているのに、それに対して法律的に全く保護を与えないのは妥当でないとの考えから、内縁関係を法律上の夫婦に準ずる関係、すなわち「準婚」として保護するようになってきています。ただ、男女が外形的には夫婦同然の共同生活を送っていても、そもそも結婚する意思がない場合(同棲や愛人関係など)は内縁関係にはならず、法律上の保護も受けられません。
 それでは内縁にはどの程度の保護が認められるのでしょうか。前述のように日本では、法律婚主義を採用しているので、全ての場合に法律上の夫婦と全く同様の保護が与えられることはありません。しかし、以下に掲げるようなものについては認められるようになってきています。
 ◎夫婦としての同居・協力・扶養義務
 ◎婚姻費用分担義務
 ◎日常家事債務の連帯責任
 ◎貞操の義務
 ◎内縁解消の場合の財産分与請求
 ◎内縁関係を破綻させた者に対する慰謝料請求
 その他、厚生年金、国民年金、健康保険、国民健康保険でも内縁関係にある者を適用対象として認めるようになってきています。
 では肝心の相続についてはどうでしょうか。これについてはやはり認められないのが原則です。ただ、この原則を貫くと、内縁の配偶者の保護に欠けるので、次の2つの場合に例外的に相続類似のことを認めております。
 1つは相続人が誰もいない場合です。民法では、法定相続人が誰もいない場合には、被相続人と特別の縁故関係にあった者は、家庭裁判所に申し立てて、相続財産の全部又は一部を請求できることになっています(民法第958条の3)。ここでいう特別縁故者とは被相続人と生計を一にしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故のあった者をいうとされています。つまり、内縁関係者が特別縁故のあった者に該当すれば、相続財産をもらえることになるわけです。
 もう1つは、内縁の夫婦が借家契約を結んでおり、契約当事者である内縁関係者の一方が死亡した場合です。この場合に、被相続人に相続人がいない場合には、その同居者は建物の賃借人の権利義務を承継する(借地借家法第36条)とされています。残念なのは、ここでもやはり相続人がいない場合に限定されているので、相続人がいる場合にはこの規定では内縁の配偶者は救済されないということです。ただ、このような場合に相続人が内縁の配偶者に明渡し請求をするのは権利の濫用であるとした最高裁の判例もあります。

【相続税はどのくらいかかるのか】

【内縁の妻でも遺産はもらえるか】

【遺留分とは何か】

【特別受益とは何か】

【寄与分とは何か】

【遺産分割について】

【相続するための手続き】

【マイナス財産とはどんなものか】

【相続できない財産】

【相続とはどういうことか】

相続手続

相続とはどういうことか

相続の対象となる財産にはどのようなものがあるか

相続できない財産

マイナスとはどんなものか

相続するための手続き

遺産分割について

寄与分とは何か

特別受益制度とは何か

遺留分とは何か

内縁の妻でも遺産がもらえるか

相続税はどのくらいかかるのか

【相続の対象となる財産にはどのようなものがあるか】

 遺留分とは、被相続人の子・直系尊属・配偶者のために法律上確保される最低限の遺産分割割合をいいます。この遺留分の制度は、被相続人の財産処分の自由を制限して、相続人の生活の安定や相続人間の遺産の公平な分配を実現するための制度です。また、兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分の割合は以下のとおりとなっております。
 ①直系尊属のみの場合…財産の3分の1
 ②その他の場合…財産の2分の1
 尚、この遺留分を持っている相続人(遺留分権利者)の遺留分を侵害して遺言が行われた場合には、遺留分を侵害された者は、遺留分を侵害する遺贈を受けた者に対して、遺留分を侵害した相続分を返せと請求することができます。これを遺留分減殺請求権といい、相続開始及び減殺すべき遺贈又は贈与があったことを知ってから1年で消滅時効にかかります。これは権利関係を早く安定させようという趣旨です。
 被相続人から生前贈与や遺贈を受けた者を特別受益者といい、相続人の中に特別受益者がいる場合は公平の見地から、各人の法定相続分を修正することになります。この制度を特別受益者制度といいます。
 特別受益の範囲は民法第903条に規定があり、次のように定められています。
 ①被相続人から受けた遺贈(遺言による遺産の無償贈与)
 ②被相続人から生前に、婚姻のため、養子縁組のため、生計の資本として受けた贈与
 このいずれかに該当するものがある場合は、その価額を被相続人の相続開始時の相続財産に加えます(遺贈については本来の相続財産に含まれているから加算しません)。
 マイナス財産とは、その名のとおり「負の財産」であり、借金や買掛金債務、また家賃や地代の支払債務などがこれにあたり、やはり相続の対象となります。もちろん扶養義務や身元保証債務などの一身専属的な債務は相続の対象にはなりません。ただ、連帯債務や連帯保証は果たして相続の対象になるのかという問題があります。これに関して判例は、連帯債務については「金銭の連帯債務については、各共同相続人はその相続分に応じて、法律上当然に分割された債務を承継し、各自承継した範囲において本来の債務者と共に連帯債務者になる」としています。同様に連帯保証についても、相続の対象になると考えられます。
 前で見たように被相続人の一身に専属する権利は相続できません。この一身専属権というのは、被相続人だけに帰属し、相続人に帰属することのできない性質を持った権利義務のことを言います。例えば、扶養請求権、離婚に伴う財産分与請求権(ただし、分与請求をした後で死亡した場合には請求できるというのが判例)、生活保護法による保護受給権などです。
 では、相続の対象となる財産にはどのようなものがあるのでしょうか。前述したように、相続の対象となる財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。プラスの財産とは、現金・預貯金・株券・不動産といった積極財産がこれに当たります。また、マイナス財産とは、借金・買掛金などの支払債務ばかりでなく、保証債務といった一見「一身専属権」と思われそうなものも含まれます(この「保証債務」については後述します)。基本的には上述のとおりですが、中には相続財産の対象となるのかならないのか問題となるケースも多々あります。以下に判例等を基に微妙なケースの判断例を列挙します。

◎相続財産に含まれるケース
 特許権・実用新案権・意匠権・商標権などの工業所有権、著作権、遺骨の所有権etc.

◎相続財産に含まれないケース
 墓地・仏壇・位牌などの祭祀財産、生活保護法による保護受給権、特別縁故者の相続財産分与請求権etc.

 ちなみに死亡退職金の取り扱いについては、通常会社の退職金規程などで定められています。その中で受給権者が定められている場合には、受取人は相続人としてではなく、固有の権利として退職金を受け取るものと解されています。他方、こうした定めがない場合には、相続財産となるか受取人の固有財産となるかは、個々のケースによる判断となりますが、判例は相続財産とする例が多いようです。尚、生命保険金と同じく、死亡退職金を特別受益とするか、特別受益でないとするか判例は分かれています。