社会保険労務士・行政書士 岩丸総合法務事務所
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 近年の労使トラブルの増加により、各社の人事労務管理が喫緊の課題となっております。

 特に未払残業代トラブルに関してはここ数年で急激に増加しています。その主な理由として以下のものが考えられます。

 ・労働者の権利意識が高まった
 ・時間外割増賃金の計算が誤っていた
 ・不況により解雇されたものの応酬
 ・弁護士や司法書士が未払残業代請求に目を付け始めた

 上記の未払残業代トラブル以外にも「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」、さらには「労働契約内容自体」や「解雇」をめぐるトラブルなども増えています。

 これらトラブルの多くは使用者側の法解釈に対する誤解や労使間の認識の違いが大きな原因ではないかと考えられます。

 「会社に突然弁護士がやってきた」「労働基準監督署が入った」なんてことにならないようにするためにも人事労務管理は適正に行う必要があります。

 以下にトラブルになりやすいケースとその際の考え方をいくつかご紹介させていただきます。

ケース 営業成績が不振な社員を解雇しようと考えている。就業規則の解雇事由にも「成績が不振なこと」が明示されているので、この場合は問題ないのではないか。
考え方 成績不振の主な原因が「仕事に対する意欲不足」とか「勤務態度不良」などであり、しかも再三の注意にもかかわらず改善されない場合であれば解雇が可能ですが、その社員が業務に誠実に取り組んでいるのであれば解雇することはできません。ただ、人事考課で不利益な扱いをすることは問題ありません。
ケース 制服に着替えるのは本来の業務ではないので、着替えに手間取りタイムカードを押すのが定刻を過ぎた場合は遅刻として扱っている。
考え方 着替えなどのいわゆる作業付帯行為に要する時間が労働時間にあたるか否かは、以下の要件を満たすか否かで判断されます。
 ◎その行為が業務を行ううえで必要不可欠である
 ◎その行為が使用者の指揮命令下で拘束され強制的に行われている
つまり所定の場所で所定の服に着替えなければならないということであれば、その間は労働時間となります。
ケース 命じてもいないのに社員が勝手に残業をした場合には、その残業に対しては残業代を支払っていない。
考え方 残業命令がなくても具体的事情に則し、残業に客観的な必要性が認められれば残業代を支払わなければなりません。会社として日常的に残業を行わないのであれば、許可制などの対応をすることが望ましいでしょう。
ケース 部長職の社員は上級管理職なので役職手当を支給し、残業をしたとしても特に残業手当は支給していない。
考え方 労働基準法上、管理監督者には「労働時間」「休憩」「休日」に関する規定は適用されません。従って、当該部長職の者が管理監督者に該当すれば、残業手当を支払っていなくても違法ではありません。ただし、労働基準法上の管理監督者に該当するためには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
 ◎経営者と一体的な立場で仕事をしている
 ◎出社、退社や勤務時間について厳格な制限を受けていない
 ◎その地位にふさわしい待遇を受けている
従って、仮に「部長」「次長」「店長」などの名称であっても、上記要件を全て満たさない限りは、労働基準法上の管理監督者には該当せず、1ヶ月の残業代換算額が役職手当を超えるようであれば、やはりその差額を支給しなければなりません。

 なお、上記の考え方は具体的な事案により異なる場合がありますのであらかじめご了承下さい。

 「人事労務管理に関して気軽に相談できるところがない
 「問題社員への対応で困っている
 「時間がなくて労務管理まで手が回らない

 といった悩みをお持ちの会社様は気軽に当事務所までご相談下さい。

人事労務管理
ケース 問題社員を辞めさせるため、取り敢えず取締役に昇進させることにより雇用契約を終了させ委任契約に切り替えようとしたが、その社員がこれを拒否したので好都合と思い業務命令違反で解雇通告をした。
考え方 例えば、係長から課長、課長から部長への昇進などで雇用契約はそのまま維持されるような場合は、業務命令として発することができますが、本ケースのように取締役に昇進させ雇用契約を終了させるような場合は、本人の同意が必要となります。従って、これを拒否したことをもって解雇事由とすることはできません。
ケース 社員から「退職したいので有給休暇を退職日までまとめて取りたい」と言われたが、それを認めると引き継ぎなどができず、会社の業務に重大な支障が生じることになるので有給休暇の申請を拒否した。
考え方 有給休暇は一定の要件を満たすことにより当然に発生する権利ですので、会社側の都合で一方的に制約することはできません。従って本ケースのような場合であっても、社員は有給休暇を取得することができます。もし業務の引き継ぎなどの都合があり休まれては困る場合は、就業規則などの規定に基づいて買い上げなどの方法を取るべきでしょう。
ケース 後で残業代トラブルが生じるのを防ぐために、従業員との間で残業代放棄の覚書を交わし署名・捺印させた。
考え方 本ケースの覚書(契約)は労働基準法に反する契約となりますので、たとえ従業員が納得して署名・捺印をしたとしても、当該覚書は無効です。
ケース 当社では3ヶ月の試用期間を設けており、入社後1ヶ月を過ぎたところで社員の適正に問題があると判断し、試用期間中なので予告なしにその社員を解雇した。
考え方 解雇予告制度が適用されないのは以下の人たちを解雇する場合のみです。
 ◎日々雇い入れられる人
  (引き続き1ヶ月を超えて働いている人は除く)
 ◎2箇月以内の期間を定めて使用される人
  (所定の期間を超えて雇用される人は除く)
 ◎季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される人
  (所定の期間を超えて雇用される人は除く)
 ◎試用期間中の者
  (引き続き14日を超えて働いている人は除く)
以上を勘案すると、たとえ試用期間中の労働者でも引き続き14日を超えて働いている人を解雇するには解雇予告が必要となります。つまり、本ケースでは入社後1ヶ月を過ぎているので、30日以上前に解雇予告をしなければなりません。
ケース 当社では基本給を低く設定し、その分職務手当などの手当類を多く支給して月給を定めており、残業代算定の根拠は基本給のみとしている。
考え方 1時間当たりの賃金の算定根拠から除かれるのか以下の7つのみです。
 ◎家族手当
 ◎子女教育手当
 ◎通勤手当(通勤距離等により支給されるもののみ)
 ◎別居手当
 ◎住宅手当(住宅に要する費用に関係なく一律に支給されるものは除く)
 ◎臨時に支払われる賃金
 ◎1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
従いまして、本ケースの職務手当は上記7つに該当しませんので、残業代算定のときには職務手当を含めて計算することになります。
ケース 新規採用者に対して、就職に際し戸籍(抄)謄本の提出を求めたが「プライバシーが侵害される」という理由で提出してもらえない。この場合は採用を取り消すことはできるのか。
考え方 家族手当支給などの参考資料として戸籍謄(抄)本の提出を求めることはよくあるケースですが、企業は必要以上に社員のプライバシーに立ち入ることがないようにしなければなりません。本人が拒否している以上他の代替手段を講じることが望ましいといえます。この場合は戸籍謄(抄)本に代えて「住民票記載事項証明書」の提出を求めた方が良いと思われます。
ケース 昼休みに交代制で電話当番をさせているが、その間は当然休憩時間なので特に労働時間として扱っていない。
考え方 休憩時間は原則として自由に利用させなければなりません。例え昼休みでその間に食事をとることができるとしても、電話番をさせられるということは使用者の一定の拘束下にある手待ち時間と評価され休憩時間とはなりません。従って、このケースでは電話番をしている時間は当然に労働時間となり、その時間に対して賃金を支払わなければなりません。
ケース 営業職の社員に対しては残業があることを考慮し1ヶ月一律5万円の営業手当を支払っているので、何時間残業しても残業手当は支払っていない。
考え方 一律営業手当を支給すること自体は違法ではありませんが、本ケースで営業職の社員が1ヶ月の残業代に換算して5万円を超える残業をした場合は、その差額を支給しなければなりません。残業が多く残業代が高くついてしまう会社は基本給や諸手当を低めに設定するなどの対策を講じることをお勧めします。

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